いくつかの画像を続けてみると、それらに関係があるように感じてしまう現象がクレショフ効果と呼ばれ、広告などのマーケティングコンテンツで、昔からよく利用されているものです。
美しい自然環境、豊かな畑、立派なシェフ、オシャレな食器、などの写真と共に提示される「料理」は、(その材料をつかっているわけではなくても)上質で美味しい料理に見えるかもしれません。
きれいな肌のモデルと共に映っている化粧品は、(そのモデルが化粧品をつかっているとは限りませんが)効果が高そうに見えるかもしれません。
現代では、”実物と関係のない”写真の場合は、「写真はイメージです」などの注釈をつけることになっていますが、その上で、効果的な”良いイメージ”の写真がプロモーションに使われることは良くあります。
ただし、過度なイメージ操作は。実物を手にした人がイメージとのギャップに低評価を下すことで、逆効果になる場合もあります。
無関係の画像でもイメージを連想してしまう。
クレショフ効果とは、関連の無い映像や画像を続けて見た時に、それらを無意識に関連付けてしまう心理現象のことです。
特に、ストーリー性があったり、人の予想や願望に沿ったイメージがあると、特に効果は強く働きます。
例えば、結婚式の写真の後に、笑顔の女性の写真を続けてみると、その笑顔が結婚を「祝福」しているように見えるものです。
1922年に映画理論家のレフ・クレショフが、無関係の映像を編集の仕方によって、前後の映像に意味のつながりがあるように錯覚させる「モンタージュ理論」を発見しました。
この「モンタージュ理論」を実証する際に見つかった認知バイアスが、クレショフの名にちなんで、クレショフ効果と呼ばれています。▶クレショフ効果について(Wikipedia)
広告や販促などの手法の中で、ビジュアルに関係するものは常にクレショフ効果を考慮していると言えます。
プロモーション映像(TVCMやネット動画、資料映像など)において、対象商品の映像の直前に、伝えたいことや強調したいものに関する映像を入れ、イメージを強調したり、方向性を誘導したりします。
【例】日本酒の販促ツールに使うビジュアル
(A) 湧き水のビジュアル
(B) お正月や伝統行事のビジュアル
この場合(A)は銘水で仕込まれた日本酒と感じ、(B)だとおめでたい日の贈り物に適した日本酒と感じられます。
商品パッケージや店舗装飾、広告などでイメージは統一感を持たせることは、ブランディングにおいて重要です。
マーケティング用語では、トーン&マナー(略してトンマナ)や ルック&フィールなどと言うことがあります。
色やデザインが統一された環境の中に商品が並んでいると、それらのビジュアルに引き続き目に入る商品に関連したイメージを持ちやすく、ブランドの認知や好感度に繋がるという考え方は、クレショフ効果の一つと考えることができます。
【例】商品のパッケージがシンプルな無地の紙製の場合
(A)素朴なオーガニックイメージのデザイン棚やビジュアルと共に陳列
(B)キラキラした装飾品やポップなイメージツールと共に陳列
この場合、(A)はムダを排除したエコなイメージのブランドと感じ、(B)だとデザインコンセプトの無い安い商品と感じられる可能性があります。
※心理学の作用は、マーケティング企画が必ず成功するなど、すべての人の行動に当てはまるものではありません。多くの効果にはその逆に当たる現状がと存在します。あくまでも、マーケティングの施策を検討する際の一つの考え方・方向性として活用してください。