社会的証明の原理とバンドワゴン効果


少数の人の意見よりも、多数の人の意見の方が安心だと考えることはないでしょうか。

「人は多数の他人の評価を信じてしまう」という社会的証明の原理と、その作用によってさらに多数が多数を呼ぶ「バンドワゴン効果」について説明します。

 


社会的証明の原理とは


社会の多数を信じ、行動してしまう。

「社会的証明の原理」とは社会心理学で使われる用語で、自分の判断よりも“社会の多数である他人”の判断を信じ、それに従った行動をしてしまう心理のことです。

たとえば、

”行列のできている飲食店は美味しいのだろう”、

”たくさんの人が購入している商品は良いものだろう”

などと評価してしまうことです。

 


社会的証明の原理とマーケティング


社会的証明の原理をマーケティングに活用する時は、主に販売促進「みんなが買っているものはイイものだろう→だから自分も買いたい」という流れを狙います。

 

「どのくらい多くの人が購入(評価)したか」が重要

「社会的証明の原理の考え方に沿うと、「自分で判断するよりも、多くの他人が評価した結果で判断したい」という人が一定数います。

そのような人には、商品のメリットや特徴を直接伝えるよりも「どのくらい多くの人に支持(購入)されているか」を実績として訴求した方が効果的です。

 

また、実際には評価が賛否両論に分かれていても、全体数として多くの人が利用していると、購入などのアクションには繋がりやすいとされています。

例えば(A)と(B)の2つの商品で

(A)10人の評価で、賛8:否2

(B)1000人の評価で、賛600:否400

の場合、(B)の方が購入されやすいという考え方です。

 


社会的証明の原理のマーケティング活用例


実際に展開されている販売促進施策の中で、社会的証明の原理が利用されている施策は、以下のようなものがあります。

 

購入者レビューの”数”を表示

購入者レビューを掲載する例は多くありますが、レビューの評価ポイントよりも、レビューの”数”の多さの方が、購入を後押しする効果は高くなります。

ただしモニターキャンペーンなども含めて、知名度が低い段階でレビュー数を意図的に増やす行為は、消費者も違和感を抱きますのでイメージの低下を招く恐れがあります。

 

ECサイトでの購買状況の表示

「すでに〇人が購入しました」などの購入情報を表示し、「人気の商品だ」と思わせることを狙っています。

 

販売実績をアピールするキャッチコピー

売れ行きをアピールするキャッチコピーを店頭のツールや広告に表記します。

「売れているから安心だ」という気持ちで、手に取りやすくなる効果を狙っています。

例)

・今、売れてます!

・ベストセラー

・〇〇部門 売上ナンバー1

・愛用者1万人突破  など

 

販促に役立つ心理学

バントワゴン効果とは


社会的証明の原理と同じようなシーンで使われる言葉に「バンドワゴン効果」があります。

ほぼ同義で使われることもありますが、マーケティングの視点では、バンドワゴン効果はブームやヒットが生まれる状況を示す言葉として使われることが多いです。

 

多数が多数を呼び、大きな流れが生まれる

社会的証明の原理の「多数の評価が正しい」という意識から、自ら「多数派の流れに乗りたい」と思う人が生まれます。

多数派を支持する人たち、多数派に乗りたい人たちがさらに集まりさらに大きな多数が作られていくいことが、バンドワゴン効果です。

購買シーンでは、みんなの評価が連鎖してヒット商品となるというような現象が例に挙げられます。

 

「バンドワゴン効果」の名前の由来

バンドワゴンとは、パレードの先頭を走る楽隊車のことです。そこから、有利な方の味方をしたり、多数派や集団に同調したりする行動のことを「バンドワゴンに乗る」という表現が生まれました。

このように、多数であることが有利や同調を生む効果がバンドワゴン効果と呼ばれています。

 


社会的証明の原理とバンドワゴン効果の関係


「社会的証明の原理」と「バンドワゴン効果」はほぼ同義で使われることもありますが、マーケティングの視点でいうと、多数を評価する社会的証明の原理(人の心理作用)によって、更なら多数が集まり、その評価が増長していく効果(集団の状況)がバンドワゴン効果ということができます。

 

購買シーンで起こる社会的証明の原理とバンドワゴン効果の実例

社会的証明の原理

・レビューの「評価」よりもレビューの「実数」が多い商品の方が購入されやすい。

・並んで陳列された類似商品は、「在庫が少ない」方が購入されやすい。

バンドワゴン効果

・「人気である」「売れている」という情報をメディアが報じて、全国的なヒットになる。

 


バンドワゴン効果と合わせて知っておきたい心理学


バンドワゴン効果を提唱した米理論経済学者のバーヴェイ・ライベンシュタインは、1950年に、バンドワゴン効果とともに、スノッブ効果ヴェブレン効果という三つの概念を提示しています。

 

スノッブ効果=バンドワゴン効果と逆の心理

スノッブ効果とは、「多くの人が持っているモノの需要が減少する」「多くの人がもっていないモノの需要が拡大する」現象のことです。

バンドワゴン効果が多くの人が持っているものに需要が集まるのに対して、人が持っていないものが欲しいという真逆の心理です。

スノッブ効果について詳しく

 

ヴェブレン効果=バンド効果の先にある見せびらかしの心理

ヴェブレン効果は、高価格のものに価値が生まれ、それを所有することで人に自慢したいという心理が生まれる現象です。この時、この商品は、みんなに知られているものである必要があり、バンドワゴン効果が起きる商品とも関連があります。

前述のスノッブ効果と比べると、スノッブ効果は人に知られていないものを欲しがるのに対して、ヴェブレン効果は周りが価値を感じているものを所有したがる効果です。

▶ヴェブレン効果について詳しく

 



Planner's Column

情報化社会こそ、バンドワゴン効果が起きやすい。


情報は個人が自由に検索して得られるようになり、価値観も多様化したと言われています。

しかしSNSが発展した環境の中、”バズる”と表現されるような「拡散」、批判や中傷が集中する「炎上」など、一つの情報に多くの人々が反応する状況は頻繁に起こっています。

個人が自由に情報が選択できる時代になったように思われても、実は、情報の偏りが加速する現象も多くなりました。

 

・リツイート数が多いものがさらにリツイートされる

YouTubeで多くの再生回数を記録した動画がおすすめに出る

・ネットニュースのコメントが一方向に偏る   など

 

いずれも、コンテンツ自体の力もありますが、それに加えて、「多くの人が注目している」ということに興味を持ち、「注目の話題を知っておきたい、乗り遅れたくない」という心理から、そのコンテンツに反応し、さらに情報が拡散していきます。

ネット上のコメントやレビューなど、情報発信をしている人は決して多数ではありませんが、それを総意のように感じる人は多くいます。

その意見を目にした人が、多数派の意見を信用したくなり、多数派に乗った行動を起こしていくのがバンドワゴン効果です。

 

現代ではSNSなどの発展によって、情報の発信側も受信側も多様化しましたが、多数が多数を呼ぶ心理がある以上、情報の一方向への加速性は変わりません。

日本国内でのマーケティング(主に販売促進)では、”多数派の支持を獲得する””多数派につく”という方向性は、意識せざるを得ないでしょう。

 


マーケティングに役立つ心理学