松竹梅の法則


選択肢が3つになると真ん中が選ばれやすくなる「松竹梅の法則」。日本の商習慣としてよく知られている手法です。

真ん中に一番買われたい価格を設定し、一番安い価格が選ばれることを避け、全体的な購入価格アップに松竹梅の法則が活用されます。

 


松竹梅の法則(ゴルディロックス効果)とは


3段階の選択肢があると真ん中を選ぶ。

松竹梅の法則とは、段階の違う3つの選択肢があるとき、真ん中を選ぼうとする心理効果です。

 「松・竹・梅」とは日本特有の表現ですので、世界的には「ゴルディロックス効果」と呼ばれています。(※ゴルディロックスは、イギリスの童話「三匹の熊」の主人公の名前が由来)

この「真ん中を選ぼうとする」心理は、販促活動の値決めに多く活用されます。

例としては、ある商品の価格が、5,000円、3,000円、2,000円と3段階に設定されていれば、真ん中の価格である3000円が多く選ばれます。

「一番高い商品が品質が高いのだろうが、失敗だったときの後悔も大きい…」と考え、「一番安い商品を選ぶのは情けない」といった見栄が生まれるようです。

結果として「失敗だったときの損失が少なく」かつ「プライドを保つことができる」真ん中の価格が選ばれやすくなるという理論です。

また、この「松・竹・梅」の3価格の選択率は、「松2:竹5:梅3」の比率に分かれるというデータもあります。

さらに、竹と梅の二段階の選択肢だった場合は「竹3:梅7」の割合で安い方が選ばれるという検証もされています。

 


松竹梅の法則を活用した値段の付け方


松竹梅の法則を活用した3つ価格は、それぞれ次のようなマーケティングの狙いがあり、その値段の付け方にもポイントがあります。

 

一番売りたい商品を真ん中の価格に設定

最も基本的な活用方法は、一番売りたい商品を真ん中の価格に設定して、その上位版と下位版にあたる商品を用意する手法です。

3つの価格はただ単に均等な値幅で設定するのではなく、より購買を高める工夫があります。

竹の価格が5,000円なら、松の価格は大きめに離して設定する。(例えば10,000円に。)そして梅の価格は、少し手を延ばせば「竹」に届く価格、3,500円にするという手法です。

もともと竹が選ばれやすい心理効果に加えて、より竹の価格がお得に見えて、竹を多く売るのに有効な手法だとされています。

 

商談のときの価格は、松→梅→竹の順で顧客へ提示する

対面で価格を提示する時は、一番高価な商品(の価格)を提示し、次に一番安価な商品(の梅)を価格が安い理由とともに提示し、最後に真ん中の価格(竹)の商品を紹介すると、購入決定率が高いと言われています。

購買者側は、「ちょっと高いな」と思った直後に、一番安い価格を提示されると「ここまでグレードを落としたくない」という気分になり、その真ん中の価格を選び安くなるという仕掛けです。

 

判断要素は”質”であることが有効

松竹梅の価格差は、人の嗜好や価値観に影響する質的要素、人によって価値観が変わるものであることが有効です。

「機能」や「量」など、誰がみてもわかる差がついている場合は、価格差は妥当なものとなり、単にターゲットや需要が分かれるだけになっていまします。

たとえば、単に「肉の量」や「タオルのサイズ」の違いでは、購買する目的が異なるので、心理効果で判断を変えることは少ないでしょう。

それに対して、うな重やステーキの松竹梅が「肉の質」の違いであったり、タオルの松竹梅が「綿の質」の違いだったりするのは、購買者側の価値観を左右するものです。

購買者側も自分の感覚を試されると考えるので、心理効果が影響しやすくなります。

 



松竹梅の法則で得られる効果


松竹梅の法則によって得られる販促効果には以下のようなものがあります。

 

(1)売上UP

今までになかった一番高い「松」の商品をつくると、値段の高い商品を買う一定数の顧客が生まれることで、売上全体は上がります。

さらに、「松」ができることで、高額な比較対象がされ、「竹」や「松」の価格が多少上げても安く見える効果もあり、1番売れるであろう「竹」の商品を値上げできれば、客単価および全体の売上のアップが狙えます。

 

(2)成約率UP

松竹梅の3パターンによって、商品の選択肢が増えることになれば、当然、商品が手に取られる確率は上がり、成約率も高くなるでしょう。

特に、一番安い「梅」の商品が、購入のハードルを下げる役割を果たせば、トライアル数が増え、その次に竹や松の商品を買ってもらえる可能性があがります。

 

(3)利益率UP

松竹梅それぞれの商品について、利益が出る価格設定になっていることが前提です。

最も価格の高い「松」の商品は、価格そのものだけでなく、利益率も高い価格設定にすることで、それが売れることが大きな利益率アップに繋がります。

同時に考えなければならないのは、一番安い「梅」の商品は、どれだけ数が売れても手間やコストにマイナスが出ないようにすることが大切です。一番安い商品をつくることでその商品が一番多く売れる可能性が高まりますが、そこでマイナスが生まれるような仕組みになると、全体での利益率アップは望めません。

松竹梅の法則で利益率をアップさせるには、赤字覚悟の商品をつくってはいけません。

 


松竹梅の法則で利益の最大化を狙うには


松竹梅の法則では「竹」の値段の商品が一番売れるとされていますが、現実ではそうならない場合もあります。

「竹」が売れゆきに関わらず、「松」が一番売れれば全体の売上額はより大きくなり「梅」が一番売れると売上額は小さくなります。

そこで、商品の内容と値付けには以下のような視点をもつことが大切です。

 

松は、プレミアム感があり十分な利益を確保できる商品

松の商品は、商品自体の価値に加えて、価格も充分な利益を考慮した値とすることが有効です。

たとえ値段が高くても、より良いものを買いたいという人に加えて、「値段が高いこと」に価値を感じる人も一定数います。

価格が高いことで需要が増す「ヴェブレン効果」についてはこちら

 

竹は、最も売りたい適正価格の商品

「竹」の商品は、最も売りたいメインとなる商品とし、価格も適切な利益を見込みます。

「竹」は、「松」が比較対象になることで価格は相対的に安く見え、利益率へ注目を逸らす効果も期待できます。

また「竹」を高いと感じる人に対しても、「梅」が受け皿となるので不要な安値設定をする必要はありません。

 

梅は、労力とコストのかからない商品

「梅」の商品は、いくら売れても労力のかからない品にすることのポイントです。

価格が低い商品は利益率も低いことが多いため、手間などの労力がかかったり、余計なコストがかかったりすると、更なる利益の減少となってしまいます。

また「梅」が購入者にとって一番価値がある商品と感じられてしまうと、それ以上の価格である「竹」「梅」が売れなくなってしまいます。

 


松竹梅の法則を活用する際の注意点


「松竹梅の法則」は多くの消費者にもよく知られており、値付けに活用しやすい法則ですが、情報も商品も豊富になった現代では、「松竹梅の法則」が有効でない場合もあります。

以下に注意点を挙げます。

 

セルフ販売では、心理効果が機能しにくい。

松竹梅の法則で「竹」の価格を売る手法は、対面販売・接客の時に有効です。

量販店などでのセルフ販売やネットショッピングでは、価格を選ぶ見栄はあまり働かないため、自分の欲しい価格をストレートに選ぶびます。結果として、一番安い「梅」の価格が選ばれる傾向が強くなります。

 

真ん中の価格は中途半端に見える。

商品の差を訴求する際に、「ちょうど良い」真ん中の価格が、個性を失わせる場合があります。また現代の日本では、消費者の多くが、高価格ブランドと低価格ブランドをミックスして購入するライフスタイルであり、価格そのものが商品の個性・特性を表す要素になる場合が多くなっています。