同調現象(同調心理・同調効果)

周囲と同じであることで安心を得る心理現象である「同調現象」をマーケティングのシーンで活用する際に、知っておくべき事柄をまとめます。


同調現象とは


意見や行動が周りと同じだと安心する。

同調現象(同調心理・同調効果)とは、社会心理学用語で、周囲の人と同じ意見や行動だと安心し、逆に自分だけが周囲と違うと嫌悪感や不安を感じる心理状態のことです。

人は、何かを決定するときや行動をするときに、他人の行動に影響されることは多いものです。「みんなと同じことをしよう」と思っていなくても、リスクを回避したい本能が働き、周りと同じなら安心するという心理が生まれるとされています。

 

同調現象の実証実験

ソロモン・アッシュの実験

アメリカで活動した心理学者ソロモン・アッシュが行った同調圧力に関する実験があります。

問題に答えるテストで、答えを知っているサクラが含まれる被験者グループを設定し、「サクラの間違った回答を聞いたあとに被験者が回答すると、サクラの回答を聞かなかった時よりも正解率が下がった」というもの。自分では少しおかしいと思っても、他人の回答に影響されて自分も同じ誤答をしてしまうのです。

同調現象は、日常生活でも多く実感される心理で、自分の判断に自信がない時ほど、また、流行に反応しやすい人ほど、同調しやすいことも実証されています。

 


同調現象をマーケティングに活用するには


同じ意見や行動は増長する。

同調現象が起きると、人は自分の意見や行動を他者に合わせようとし、結果として集団の行動や考え方が一方向に傾いていきます。

この同調現象が影響する現象として、行動心理学の社会的証明の原理(=多数が正しいと判断してしまう心理)や、バンドワゴン効果(=多数が多数を呼ぶ現象)があります。

特に同調現象は、社会的にその人が所属しているコミュニティーや環境によってより強く働くことが注目点です。

積極的・自発的な判断として他者に合わせるというだけでなく、”周りと違うことが不和を起こす”と考えて、自分の意志と反していても周りに合わせた行動をする場合も多くあるでしょう。

例)

・就活にはみんなと同じようなリクルートスーツを着た方が良いと思う。

・グループの多数派と意見が異なっていたが、反対意見は言わなかった。

・みんなと違う行動をとる人を敬遠したくなる。

 

同調現象は、年代や職業、趣味・嗜好など、ターゲットの属性を絞ってアプローチする場合に、そのグループの慣習やインサイトを分析するのに役立ちます。

 


同調現象のマーケティング活用例


SNSとインフルエンサーによる発信

SNSなどで活動し一定のメディア力をもつ、インフルエンサーと呼ばれる人たち。

彼らをプロモーションキャラクターに選出し、商品をおすすめしてもらったり、コラボ商品を作ったりする施策があります。

インフルエンサーのファンは、SNSでいわゆる”フォロワー”になっています。

SNSでは他人からの承認欲求が生まれやすいことに加えて、特にフォロワーは、ファンコミュニティの中で、同じ意見をもち同じ行動をしたいという意識が強くなりがちです。

”コミュニティの中の一員でありたい”という意識は、同調意識を高める大きな要因であり、コミュニティのリーダーあるインフルエンサーが発信する情報は、高いマーケティング効果をもたらしています。

 


同調効果と合わせて知っておきたい心理学


ハロー効果
ハロー効果
社会的証明の原理とバンドワゴン効果
社会的証明の原理


 Planner's Column 

非難の同調 キャンセル・カルチャー


近年注目されているキャンセル・カルチャー

キャンセル・カルチャーとは、SNSの普及に伴い、多く見られるようになったボイコットムーブメントの一つ。著名人や企業などのある一つの問題点を取り上げて、その他の部分までもすべてを否定するかのように非難することです。

言葉としては、英語圏で2015年頃から広く使われるようになりました。

語源は、類義語のコールアウト・カルチャーから派生性して、「Youre cancelled.(あなたはもう終わり)」となるまで追い詰めることから来ているようです。

 

例えば、芸能人やスポーツ選手などの有名人に対してある批判が起きた時、そのニュースに対して、不特定多数の多くの人が非難や過剰な糾弾に同調し、今までの人気や好感度失、社会的な立場やブランド力を奪っていこうとする動きです。

今までファンだった人が、ツイッターのフォロワーを辞める、ユーチューブのチャンネル登録を解除するなどから始まり、さらに別のインフルエンサーが悪評を拡散させ、それに同調していく人も増えていきます。

また、非難されている人を擁護した人にも非難が発生したりすることがあります。

 

他には「〇〇警察」などの言葉に代表されるように、あるルールに対して一側面の価値観を強く発信する人達が現れます。

彼らは独自の正義感をもっている場合がありますが、そこにルールが存在する故に同調する人がいることも前提となります。

または、標的となる敵をつくり出して、炎上を面白がるだけの場合もあるでしょう。

  

SNSがキャンセルカルチャーの力を増大させる

このようなキャンセル・カルチャーは、行き過ぎた行為になりがちで、いわゆる“誰も得をしない”状況をつくりだしていることが多々あります。

集団心理による非難の集中は過去からありますが、現代のSNSの匿名性と拡散性によって、その暴力性や攻撃性が顕著になります。

まさに負の同調現象です。

企業や著名人、インフルエンサーにとっては、インターネットが普及して以来、いわゆる「炎上」と呼ばれる現象が数多く起きてきました。

その中でも今までは、騒動で注目を集める「炎上商法」と捉えられたり、「アンチもファンのうち」というような考え方がありました。

しかし、近年はこのキャンセル・カルチャーのように、致命的なダメージを追うことが多くなり、発信者は特に注意を払う必要が出てきたのです。

 

マーケティングでもキャンセルカルチャーには細心の配慮を

「SNS界での話題は、世論の総意ではないから、気にし過ぎる必要はない」という方もいると思いますが、企業がネットでの批判に過敏になるのは、世界的なこのキャンセルカルチャーの動きが過熱している点にあると思われます。

 


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