プレゼンに役立つ心理学


取引先へ対しての企画提案、社内プロジェクトの打ち合わせ時など、プレゼンは対象となる相手がいて、その相手に、納得・賛同してもらわなければなりません。そのためには、相手の心をつかむ必要があり、心理学が役立つ場合があります。プレゼンや提案資料の表現などに活用できる心理学を、その手法とともにピックアップしてみました。


手法1)伝えたいメッセージは繰り返し訴求


心理学的には、重要なメッセージや相手に伝えたい重要な情報は、何度も繰り返し登場させることが効果的だとされています。

心に響く言葉や関心を引く表現は人によって違いますから、同じ情報も表現や言い方を変えて何度も登場させることが有効です。プレゼン資料内の重要なメッセージは、表現を変えながら何度も入れておきましょう。

 

ザイオンス効果

ザイオンス効果は、「単純接触効果」とも言われ、接触する機会が多いほど、その対象に好意や親近感を抱く可能性が高くなることという効果です。

一般的には人との交流に使われることが多いのですが、プレゼンなどでも言葉やビジュアルなどで何度も目にすることで、単純に刷り込みが行われ、よく覚えてもらえるのはもちろん、好感度も上がる可能性があります。

ザイオンス効果について詳しくはこちら

カクテルパーティー効果

カクテルパーティー効果とは、人間の脳は複数の情報が入り乱れる中にあっても自分に関係のある情報のみを選別できるという聴覚効果のことです。

人にはそれぞれ聞き取りやすいワードがあるので、相手にとって「聞き取りやすいワード=関心・関係のある情報」をうまく掴むことができれば、コミュケーションがより円滑に進めることができるでしょう。

具体的には、プレゼンや打ち合わせで説明などをする時に、相手が知っている情報、がよく使っているフレーズなど取り入れることで、相手の注意を引き、気に留まりやすくなることが期待できます。

カクテルパーティー効果について詳しくはこちら

忘却曲線

ドイツの心理学者ヘルマンが作った「忘却曲線」とは、人間の記憶が忘れられていくスピートを表現したものです。そして彼の研究では、人間の記憶は20分間で約58%まで失われると結論づけています。

この理論によると、打ち合わせやプレゼンで情報をしっかりアピールするには最初の20分間に重要な情報をしっかりと印象付けることで、相手の記憶により残る情報とすることができるかもしれません。


手法2)良い情報を最初と最後に伝える


新製品や新規企画をプレゼンするときは、最も優位性のある点を、最初と最後にアピールしましょう。心理学では、人の記憶に残りやすい情報は、最初に接したものである場合と、最後に接したものであるという両方の法則があります。

対面でのプレゼンの場合は、状況によりどちらが効果的を判断するの場合もありますが、企画書などの書面であるならば、最初(はじめに)と最後(おわりに)で、2度メッセージを表現しておけば安心です。

 

初頭効果

第一印象は、最も消すのが難しく、最も印象に残るものです。第一印象の影響がその後の長く続くことを 「初頭効果」といいます。

プレゼン時のプレゼンターとしての第一印象はもちろん、提案内容についても、最初に印象を残すことが有効です。

▶初頭効果について詳しくはこちら

新近効果

初期効果とは逆に、最後に見たり聞いたりしたものが最も記憶に残る現象を、「新近効果」といいます。「終わりよければすべてよし」と言われるように、最後に見たり聞いたりしたものが強い印象を残せば、過程に関わず好意的に捉えられることがあります。

プレゼンでは最後の締めの言葉などが重要です。

▶新近効果について詳しくはこちら

アンカリング効果

アンカリング効果は、人が何の意思決定を行う際、最初に見たデータを良く記憶していて、それを重要視するというものです。製品の優れた点や自社の良いデータなどは、最初に提示するとうまく印象づけることができます。

▶アンカリング効果については詳しくはこちら

ハロー効果

ある1つの目立つ特徴を認識すると、その他の構成要素まで一番目立つ特徴に引っ張られて歪んで認識してしまうことを「ハロー効果(または認知バイアス)」といいます。

いわゆる「第一印象」に関する効果です。企画やプレゼンでいえば「つかみ」にあたるでしょう。

一番の強みを最初に強く印象付けることができれば、全体的に良い印象を持ってもらえる可能性が高くなります。

▶ハロー効果


手法3)欠点も伝える


良いポイントを最初に伝えることに加えて、欠点や改善すべき点、マイナス評価になりそうなデメリットがあるならそれを伝えることで、プラスの効果を得る場合があります。

 

両面提示の法則

メリットだけを紹介した時よりもデメリットも同時に紹介した方が説得力や信頼感が大きいという法則です。相手はきちんとマイナス点も説明されることで情報の発信者にたいして誠実さを感じます。

 


手法4)相手が信頼しやすい情報を提示する


プレゼンでは提案内容に対して、調査や実績などによる裏付けデータを求められることも多いと思います。特に、信頼性として、データの公平性や内容ももちろんですが、以下のような“相手が心理的に信頼しやすくなる”心理効果を意識して提案することも有効です。

 

権威への服従原理

権威のある者の言動には無意識に従ってしまうという法則です。専門家として紹介された人物のアドバイスであれば、無条件にその内容を信頼し、受け入れてしまうという例があるように、人は安心感を得るために自分よりも詳しい人、つまり専門家の意見を聞きたがります。

 

社会的証明の原理

人は「多くの人が支持している」「流行っている」と聞くと、それについて肯定的に考えやすくなるという心理効果です。プレゼンでは対象となるターゲットの中で、以下に多くの人の支持を得ているものであるかをアピールすることが有効です。

▶社会的証明の原理について詳しくはこちら

ウィンザー効果

第三者を介して発信された情報は、一次ソースから直接得た情報よりも大きな影響を与えるという効果です。インフルエンサーなどがその例です。自社の提案内容について、第三者からの評価を提示できると効果的です。

▶ウインザー効果について詳しくはこちら

損失回避の法則

人は「得をすること」よりも「損をしないこと」を選んでしまうという法則です。プレゼンでも、リスク面を指摘されることは多いと思います。

新商品やプロジェクトの提案などでは、リスクを回避できる展開を取り入れておくと良いでしょう。

▶損失回避の法則について詳しくはこちら


手法5)決断しやすい選択肢を設定する


プレゼンや会議では、相手に、内容を選び決定してもらう場面があります。結果は相手が決めることなので何もできないと思いがちですが、選択肢の設定によって期待する結果を得る確率が変わります。

 

決定回避の法則

選択肢が多すぎると、人は選択することに負担を感じて選べなくなるとされています。プレゼンでは、とにかくたくさんの案を並べた方が好感度を得られるとする考え方もありますが、決定を促す場合には、選択肢は少ない方が有効です。いつでも2択のみを迫るという訳ではなく、相手が選択することに負担を感じさせない選択肢の数を設定しましょう。人が内容を記憶に残しやすい選択肢の数は7つ程度までと言われています。

▶決定回避の法則について詳しくはこちら

ゴルディロックス効果(松竹梅の法則)

人は3つの選択肢があると中間を選びやすいという現象を「コルディロックス効果(松竹梅の法則)」といいます。例えば、新プロジェクトの予算を通すプレゼンの場合。自分達が一番ほしい妥当な予算額に対して、一つは高め、もう一つは低めの予算額を提示します。こうすることで真ん中の希望額が通りやすくなる傾向があります。

▶松竹梅の法則について詳しくはこちら