アンカリング効果

アンカリング効果は、販促施策でよく使われている心理効果です。

例としては、商品を割引販売する時に割引前の価格を表示して割引価格をよりお得に感じさせる手法が有名です。


アンカリング効果とは


アンカリング効果とは、最初に提示された数字やデータが無意識に印象に残り、その後の意思決定や行動に影響を及ぼす現象のことです。この現象は、認知バイアス(認知が偏ること)の一つとして日常生活の中でよく起きています。

  ※アンカリング(Anchoring)とは、錨(いかり:Anchor)で船を係留すること。つまり、最初に得た情報が錨で係留させるように、意識の中で固定されてしまうことからこの名前がついています。

 

人は、先に得た情報を自分の判断基準にしてしまう。

人はある情報を先に見ると、その後に見た情報を基準として、それと比べた判断をしてしまうものです。

特に、対象となる物事を熟知していない人ほど、基準を持っていない状態となり、客観的・俯瞰的な判断ができないことから、自分の中で基準となる情報を早く見つけたくなります。

また、すでに基準値を持っている人でも、一度得た情報は更新しづらく、自分の過去の情報や価値観が強く働き、時代や環境に合わせた新しい判断ができなくなることもあります。

 

判断基準になりやすい数値

判断基準となる情報として、数値化できるものはわかり易いものです。その数値としては、平均値定価過去の記録などが挙げられます。

例えばテストの点数なら、自分の点数をグループ内の”平均値”と比べて、上下を判断することが多いでしょう。

ところが、一般的にテスト点数の平均値は、順位や実力の分布として中央値をさしているとは限りません。つまり平均点より上ならば、半分より上とは限りません。同じように、商品の価格も、”定価”は販売主が独自につけた価格であり、モノの性能や品質からみた適正価格とは限りません。

つまり、数値は基準の本質を表していないことも多々ありますが、多くの人のアンカー(基準値)になりやすいものです。

 


アンカリング効果をマーケティング活用するには


アンカリング効果は、マーケティングでは主に販売促進のシーンで活用されることが多くあります。「基準となる情報を提供することで、その後の比較判断及び購入決定をしやすくする」のが狙いです。

例えば売り場において、商品価格、機能や性能などに対して、判断基準となるものをすぐそばに提示することで比較検討の時間を減らし、早い購買決定に繋げます。

 

 


アンカリング効果を活用した施策例


通常価格と割引価格の併記

割引販売をするときに「当店通常価格」として割引前の価格を表記する方法で、販促の場面では多く行われている基本的な手法です。

・「当店通常価格」が判断の基準値としてアンカリングされ、それ以外の値を、高い・安いと判断するようになる。

・割引前後の価格差が大きいほど、実際の価格に関わらず『これはお得なんだ』という印象を強めることがある。

例)定価10万円→1万円 ※5000円の類似商品があっても90%OFFがお得に感じる。

 

 

評価や実績を示す

「当社比●●%アップ」「当店一番人気」など、性能や人気の高さを比較・順位付けできるような内容で示します。

・どれを選んでよいか迷う時、よりお得、より人気なものを選びたいという心理から、実際の商品特徴がわからなくても、他より優れているように見える。

 


アンカリング効果と合わせて知っておきたい心理効果


アンカリング効果を高める「シャルパンティエ効果」

シャルパンティエ効果は、数値の単位などが変わることで、値が実際よりも大きく(小さく)感じられる効果です。

マーケティングのシーンでは、商品を紹介する時に、成分の含有量や重さ、価格などをより印象的にみせるように、都合のよい単位が使われています。

例としては、「ビタミンCが1000ml(=1g)」「1年で3650円(=1日10円)お得」などがあります。

アンカリング効果と合わせて使うことで、基準値からの変化を大きく(または小さく)見せることができる場合があります。

 

アンカリング効果と似ているが活用が異なる「初頭効果」

最初に得た情報が強く印象に残り、その印象が後の判断に影響してくるのが初頭効果です。

最初の情報を基準にして物事を判断するアンカリング効果と現象は似ていますが、マーケティング施策においての使い方は、方向性が異なっています。

アンカリング効果は、価格表示などに利用されることが多く、最初に得た(基準となる)数値よりも「良い印象の数値」を示すことで、その差を印象づけます。

一方の初頭効果は、最初の印象を引きずることなので、最初に良い印象を与えることで後から他の情報が示されても、最初の印象を維持してもらうことを狙います。

アンカリング効果が「最初よりも後の数値で良い印象を与える」のに対して初頭効果は「最初の印象を後まで継続させる」点、が主な違いとしてあります。

 



アンカリング効果の活用で注意する点


アンカリング効果は、消費者にとっては有益な情報になる場合もあるのですが、故意に判断を誘導するような演出することは、訴求対象者に利益をもたらさないだけでなく、印象を悪くする場合もあるので注意が必要です。

標準価格の表示などは、アンカリング効果の定番的な手法ですが、現在では、通常価格をより高く表記することは、「二重価格表示」として景品表示法に違反します。

 


マーケティングに活用できる心理学 目次へ
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