フォールス・コンセンサス


ここでは、自分の考えが常に多数派であると思い込む心理「フォールスコンセンサス」をマーケティング活用する方法について考察します。

 

フォールスコンセンサスとは

フォールスコンセンサスとは、1970年代にアメリカの社会心理学者リー・ロスらが唱えた「自分の意見や行動が多数派であり正しいものだ」と感じる心理現象です。

人は自分がみんなと同じと思えば安心感を得られるものです。そこから今度は逆に、安心感を得るために自分は常に多数派であると思ってしまうようです。そこから、自分にとって都合のいい解釈をしてしまうということになります。フォールスコンセンサス効果によって、多数派の合意があるように錯覚してしまい、正しい判断ができなくなってしまうことから、「偽の合意効果」と呼ばれることもあります。

 

また、もう一つの効果として、「自分とは異なる意見や行動」を受け入れにくくなることもあります。

 

フォールスコンセンサスをマーケティングに活用するには

フォールスコンセンサスをマーケティングに活用するには、消費者心理に対応することよりも、主に発信側であるマーケティング企画者や制作者が意識するべきことが重要だと筆者は思っています。

 

マーケティング企画者・制作者側が注意するべきフォールスコンセンサス

販促プロモーションを企画・制作する側の人にフォールスコンセンサスが働くことがよくあります。

自分の考えたデザインやコンテンツが多数派に向けたものであると感じてしまうことです。

 

例としては、

・多くの人が好むだろうと思ったデザインがウケなかった。

・ターゲットに共感を得られるだろうと思ったコンセプトがクレームの原因になった。

・大規模な販促施策を行った商品よりも、販促の力を入れなかった商品の方が売れた。

 などが挙げられます。

 

「自分の考えが多数派である」、「自分は多数派の気持ちをわかっている」と考えると、現実ではそうでないことがあります。マーケティング担当者は消費者・生活者の心理を掴まなければならない立場にありますが、どうしても自分の思い込みが強くなったり、自分の都合のよい理由を採用してしまったりするものです。

適切なデータを活用したり、第三者の意見を取り入れたり、常に多角的な見方ができるようにしておきましょう。

 

しかし、企画の際には、新鮮さや斬新さを求めることもあり、あえて今までなかったような切り口やユーモアのある演出を選択することがあります。その際にもマーケティングプロモーションとして結果を出すためには、正しい多数派の意見見極めた上で、あえて反対のメッセージを提供することが大切です。

 

 

消費者のフォールスコンセンサス

消費者側に生まれるフォールスコンセンサス効果の中で、マーケティング的に注目しなければならないのは、商品にマイナスのイメージを持っているお客様への思考です。

「自分の価値観や評価が正しい」と考えるお客様は、その意識が商品・サービスを購入の障壁となっている可能性があります。

 

例えば、

・広告は信じない

・自分の方が企業よりも正しい情報を持っている

・価格が不当に上乗せされているのではないか

・このサービスは自分には関係ない

といった思い込みなどがあります。

 

 

この否定的なフォールスコンセンサスを弱めるためには、第三者のレビューや科学的な根拠などの「客観的データ」を提示することが、ある程度有効であると考えられます。これは、社会的証明の原理にも繋がります。ただ、情報が多くなった現代では、レビューやデータなども信頼性が確保できない場合があるので、「客観性」を証明する手法も難しくなってきてているかもしれません。

 

フォールスコンセンサスはかなり強力な心理現象

フォールスコンセンサスは、マーケティングの現場よりも日常の社会生活の中で多く起こっています。

今の日本でいうと、マスク警察などと言われる人の心理と行動がそれにあたるでしょう。

また有名人の不祥事をネットで叩くなどのネットでの炎上騒動。これもネットに対しては自分一人で向き合っていることから、フォールスコンセンサスを自制したり修正したりする力がなくなってしまいます。

人間としての本能的な部分に関わる心理現象であるとされているので、ほとんどの人がもっています。また客観的な多数派を捉えることができたとしてもそれが必ずしも正しい結果と導くとはかぎりません。

 

筆者は、特にマーケティングに活用する場合は、極端に多数派に執着するのではなく、バランスを持った企画と運営を行うことが必要だと思っています。ただし、「できる限り客観的な視点をもつ」という心がけは大切です。