
3月3日は桃の節句。小さな女児のいる家庭では、子供の成長を願ってお祝いをする「ひなまつりの日」です。
少子化が進む日本で、子供のお祝いイベントである「ひなまつり」の市場は今度どうなっていくのでしょうか。近年の消費者インサイト調査の結果など、市場状況を考察するヒントになる情報をシェアします。
ひなまつりの市場規模
ひなまつりに関連する商品やサービスの市場規模は正確な数字はありませんが、以下のような統計があります。
内閣府の調査による「ひなまつり・こどもの日」に関連する商品・サービスの消費支出額(2019年)は、約1,336億円。前年比0.1%増です。
この消費支出額の内訳は、以下ようになっています。
・ひな人形関連:約1,075億円
・菱餅やちらし寿司などの食品関連:約157億円、
・菖蒲湯や桃の節句に関するイベントなどのイベント関連:約103億円
2020年以降は新型コロナウイルスの影響により、イベント中止や行動制限などで消費支出額にも影響が出ているため、以降の市場規模については数年後から検証した方が良いでしょう。
令和の節句祝いの実態調査(スタジオアリス 2023年)
(株)スタジオアリスが行った、「桃の節句(ひなまつり)」や「端午の節句」などの節句祝いについての実態調査をシェアします。
対象は
・0歳以上~6歳以下の子どもを育てる男女=令和親(300名)
・1989年以降~2005年までの間に産んだ子どもを持つ男女=平成親(200名)
計500名です。
その結果によると、平成親と令和親では、令和親の方が「ひなまつり(桃の節句)」「端午の節句」のお祝いに積極的な傾向があることなどが明らかになっています。
令和親の方が「桃・端午」のお祝いに積極的

「節句をお祝いする予定やお祝いした経験」について、平成親と令和親での比較。
ここでは「桃の節句」「端午の節句」ともに、令和親の方がお祝いに積極的であるという結果になっています。「子どもの成長を願う行事」という点においては、桃の節句と端午の節句は、むしろ現代の親こそ大切にしている行事のようです。
祝い方は「お飾りを飾る」「自宅でご馳走」が多数。

節句のお祝いの仕方については、平成親・令和親ともに調査結の上位が「お飾りを飾る」「自宅でご馳走」「記念写真を撮る」となり、時代が変わっても、節句の祝い方にはあまり変化はないようです。
節句をお祝いするのは「小学校高学年まで」

節句は何歳頃までお祝いするかの問いには、「桃の節句」では「小学校入学前まで(28.0%)」がトップとなっています。また、約1割が「20歳以上(9.1%)」でもお祝いしていることが分かりました。
「端午の節句」では、同様に「小学校入学前まで(30.1%)」が多いものの、「20歳以上(1.2%)」の回答はあまり見られず、「小学校高学年まで(26.0%)」や「小学校低学年まで(22.5%)」が多い傾向にあります。
「桃の節句」は「端午の節句」に比べて年齢が上がってもお祝いする家庭が多い一方、「端午の節句」は小学校高学年までをボーダーラインとする家庭が多いようです。
参考:五節句とは
五節句とは、以下の5つの節句を合わせた日本の伝統行事です。
・1月7日に七草を食べて無病息災を願う「人日の節句」
・3月3日に女児の健やかな成長を願う「桃(上巳)の節句」
・5月5日に男児の健やかな成長を願う「端午の節句」
・7月7日に短冊に願いを書き、笹につるして夢成就を願う「七夕の節句」
・9月9日に菊を楽しみ不老長寿を願う「菊(重陽)の節句」
前述のスタジオアリスの調査では、五節句の認知度も調査しています。
その認知度は「七夕の節句」は98.4%、「端午の節句」は97.0%、「桃の節句」は90.6%、「人日の節句」は85.6%と、4つの節句は、伝統文化が廃れつつある現代においても、高い認知度を保っていますが、「菊の節句」は35.0%と、認知度は低めです。
ひな祭りの実態調査(エデュケ株式会社 2022年)
こちらは2022年の調査ですが、木製玩具やベビーグッズを販売するエデュテ株式会社が行った「ひな祭りに関するアンケート調査」です。調査対象は、「子育て中または子育て経験のある20~60代男女」なので、自身が父母または祖父母にあたる人ということになります。
■調査概要
調査名:ひな祭りについての実態調査
調査期間:2022年2月7日~2月23日
調査手法:Web調査
調査対象:子育て中または子育て経験のある方
回答者数:56名(20~60代男女)
ひなまつりの経験

ひな人形について



ひな人形を購入した時期や経緯
- 「時期は予約開始の11月ごろ。実家の親が購入してくれました」
- 「娘が産まれてすぐ(12月頃)に。自分のひな人形は持っていなかったので、娘には持たせてあげたいと思い、また両親にとって初孫ということもあり購入しました」
- 「実家の両親が買ってくれました。娘が初節句を迎える年の1月に、家族皆で人形屋へ行き選びました」
- 「初節句を迎えるため、1月下旬頃に購入しました」
- 「義理の両親にいただきました」
- 「昨年は生まれたばかりでひな人形が売り切れてしまっていたので、今年私の親から贈り物としてもらいました」
- 「私のひな飾りを飾って終わりにしていたのですが、旦那が子どもたちに買ってあげたいと言い、時期外れで価格が安くなっているのをネットで見つけ買いました」
- 「1月頃に。西陣織のおひな様をインスタで見つけ、購入。娘が大人になってもインテリアとして飾れるようなおしゃれでかわいいおひな様が欲しかったので、これだ!と思い買いました」
ひな祭りのお祝いについて


- 「おひな様を飾り、お祝いのご飯を食べます」
- 「桃の花を飾る、写真撮影、ケーキやちらし寿司を食べる」
- 「1歳を迎えて食べられるものが増えたので、ひな祭りメニューを作ってケーキも食べる予定です」
- 「ケーキ、ちらし寿司、ひなあられを可愛らしいお洋服を着ながら食べて過ごす予定です」
- 「子ども用ちらし寿司を作って袴ロンパースで写真撮影」
- 「毎年恒例なのですが、義父母・主人・私・娘で記念写真を撮ったり、義母が娘のために可愛らしいひな祭りの手まり寿司を作ってくれる予定です」
- 「両家の両親を招いて、娘を囲む食事会を行う予定」
- 「孫の初節句です。兄弟が集まって食事をする予定です」
- 「コロナ禍で会えていない両親に、ひな人形と娘の写真をたくさん撮って送ろうと思っています」
サマリーと考察
・半数以上の人が「ひな人形がある」
・一番多い形状は、お殿様とお姫様のみの「親王飾り」
・孫の初節句を祝う祖父母が購入することが多い
・お祝いの仕方は、お祝いの食事・スイーツと記念撮影
子どものいる家族では、約半数がひなまつりを楽しんでいます。
ひな人形は、住宅事情や生活スタイルなどからやはりシンプルがコンパクトなものが主流で、今後もこの流れが続くことでしょう。よりコンパクト化していくことも考えられます。
購入者は、祖父母が多く、時期は初節句を迎える前の12~1月頃に購入したという回答が多かったようです。特に初節句の場合、両親も交えてひな祭りのお祝いをする家庭が多く、ひなまつりは、ランドセルと同様な「三世代消費」の代表的なテーマと言えるでしょう。
ひなまつりのお祝いの仕方は、お祝いの食事として、「ちらし寿司」スイーツは「ケーキ」、そして「子供の記念撮影」が定番のようです。
過去の数十年の範囲でみても、現代までにそれぼどひなまつりの捉え方は変わっていないように感じられますが、数年も少子化の傾向は顕著で、これからの10年では市場規模はもちろん、スタイルも大きな変化が訪れるのではないでしょうか。
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ひな祭りのマーケット(市場規模)について
加速する少子化社会
総務省の発表によると、2022年4月1日現在、日本国内の「子ども(=15歳未満)」の人口は1465万人、総人口に占める子どもの割合は11.7%です。数では41年連続、割合では48年連続の減少となっており、ひな祭りの主役となる子供たちは今後も減少していくことが明らかです。
ここ第二次ベビーブームの渦中と言える1973年 2,091,983人ですので、この50年で約7割ほどの規模になっています。
子どもの成長を祝うお祭りとして、小さな子どものいる家庭にとって意義のある行事であることに変わりはなく、伝統的なお祝い市場として失われることはなないとしても、経済視点での市場規模の縮小は企業プロモーションには影響してきます。
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ひなまつりマーケティングの未来
ひなまつり費用の単価アップ
一家庭・一人あたりのひなまつりにかける金額をアップさせる取り組みがあります。
例)
(1)ひな人形プレミアム化
(2)お菓子や子供へのプレゼントなどに高価格帯のアイテムを設定
(1)は、兄弟姉妹の減少や住宅事情からひな人形もコンパクトなものが多くなり、価格アップには工夫が必要です。
(2)は、子供が少なくなった分、かける費用がアップする場合もあるので、一企業のレベルでは可能性はあります。
ひなまつりの行事食を盛り上げる
ひなまつりの行事食としては、
・ちらし寿司
・雛あられ
・甘酒・白酒
・菱餅
・桜餅
などがあります。
子どものいる家庭だけでなく、多くの人達が楽しめるように、レシピ提案や飲食店での提供などでこれらの行事食に関連する商品を新しく開発したり、販促していくことができます。
近年では、実際には本来の旬(桜の時期)と少しずれる「桜餅」を、ひな祭りの時期に合わせてフェアなどで販促する例が多くなっています。
ひなまつりのターゲットの拡大
上記のアンケートにもあるように、ひな祭りを大人になってから祝う人もわずかながらいるようです。
マーケティング企画アイデアのひとつに、こども(女の子)だけでなく、大人もひなまつりのターゲットとする「大人のひなまつり」があります。男の子の成長を祝う「端午の節句」に比べると、女性の方がイベントごとが好きという捉え方でしょう。
新しいひなまつり商品の開発
ひなまつりに関する新しい商品やサービスを創出し、市場に新規参入することです。他業界からの参入やベンチャービジネスなどにも可能性があります。
子供や家族をターゲットとした企業・ブランドとのコラボも有効策の一つでしょう。ただし、対象となる人口が減少していく市場ですので、ハードルは高いもののひとつです。
2023年のひなまつりに向けて
前述のアンケートにもあるように、ターゲット(対象年齢の子供がいる家族)にとって、ひな祭りの実施意向は特に減少はしていません。
季節イベントとしての基本需要はあると思われます。