得よりも損の回避を優先する心理「損失回避の法則」をマーケティングに活用する際に知っておくべきことをまとめます。
損失回避の法則とは、「人は、得をすることよりも損をしないことを選ぶ」という心理傾向のことです。
人は「利益に対する喜びよりも、損失を被った際の痛みを大きく感じる」とされています。
また、現状維持バイアスという「大きな変化や未知を避け、現状を維持したくなる」心理も影響し、リスクを負ってでも利益を狙う行動をとる人の方が少ない傾向があります。
実証としては、ノーベル経済学賞したダニエル・カーネマンが「人は常にリスクを予測して行動する」ことを実験により証明しています。
また、その他の実験なども含めて、主に以下の3つのような条件と行動が実証されています。
1) 利益が得られることがわかっている場合、その利益を逃すことを損失と感じる
2) 損失を被ることがわかっている場合、できるだけ損失を少なくしたいと考える
3) 損得が分かれる場合、利益のチャンスより損失のリスクを回避しようとする
人は、未来のことに関しては、「何が”損”になるのか」を予測して行動する傾向があることがわかります。
マーケティングシーンにおいて損失回避の法則は、販売促進の施策に多く活用されます。
人にとって「モノを買う」という行為は、購入した後のこと(未来)の予測が必要であり、それは、常に”損”があるかもしれないという考えを生んでしまうのでしょう。
「損をしたくない!」という、損失回避の法則によって起こる心理作用や行動を販促シーンに当てはめると、以下のような販促施策の方向性が考えられます。
もともと不満や不利益(損)がある状態を想定し、商品やサービスを利用することで、その損が解消できることをアピールします。
・誰もが逃れられない損失(老化など)を回避する商品やサービス
・ターゲット自身に今現在、損失があると気付かせるメッセージ
・定期購入者への永続割引き
商品やサービスを使わなかった場合のデメリット(損)や、購入者の特典が限定であることなどをアピールします。
・今だけの特別価格、購入特典
・今しか買えない数量限定、期間限定販売
・ポイントなどの特典の権利失効
購入した時に満足できなかったり、失敗すること(損)を恐れる気持ちを払拭できるようにします。
・品質保証の返金システム
・無料のお試し期間
・初回限定価格
人は、自分が購入しようとする商品やサービスに対し、「あの商品はいつもこのくらいの値段で買える」というような「参照価格(=自分なりの基準)」を持っています。
割引を常に行うと、ターゲットとなる消費者が低価格(=お得な価格)に慣れてしまい、参照価格が下がってしまいす。
参照価格が低下しないように、割引や特典については長期的な利益や影響を考慮して設定することが重要です。
損失回避の法則を効かせるために、「損失」を強調することになります。
その結果、メッセージにネガティブ表現が多くなり、商品やブランドのイメージに影響がでる場合があります。