
今年もバレンタイン商戦の時期となりました。
バレンタインデーの市場規模は、この10年ほどの間も1200~1300億円という規模で推移し、日本シーズンイベントの中で屈指の巨大市場であることに変わりはありません(日本記念日協会:記念日文化研究調べ)。
しかし、コロナ前の2018年、2019年頃からすでに市場規模は減少へ向かいはじめ、恋愛イベントからの変化、義理チョコ文化への抵抗、高価なハイブランド品への関心低下などの傾向がみられてきたと思います。
コロナ禍を経て、2022年頃からは経済活動の回復に合わせて、市場規模も微増していますが、消費者は、「自分が楽しむため」、「家族や友人など身近な人と過ごす時間」と捉える人が一段と増え、職場などでの義理チョコの実施はさらに減少を見せているようです。
バレンタインデーに関する意識調査
毎年様々な企業やメディアから発表されるバレンタインデーに関する市場調査、意識調査の中から2022年~2023年に行われたものの結果をシェアします。
今後のバレンタインデーをフックとしたマーケティング企画の参考にしてみましょう。
今年は、義理チョコ市場の縮小を指摘する結果が多く示されています。
※アンケートは対象者やアンケートの設問などにより、結果やその表現が変わってきます。マーケッターやプランナーの方は、目的とする企画の方向性や対象者を見極めながら、市場の変化やインサイトを判断してください。
「Job総研」による調査(2022)
社会人を対象としたインターネット調査
調査対象者:全国 / 男女 / 20~69歳
調査条件:1年以内~10年以上勤務している社会人 20人~1000人以上規模の会社に所属
調査期間:2022年1月28日~2月2日
サンプル数:565
【サマリー】
・女性回答者全体の84.6%が今年職場でバレンタインを実施しない
・2019年からの推移でバレンタインのプレゼントを渡す人は毎年減少
・回答者全体の45.9%が「職場で義理チョコを渡す文化」について反対派
「ぐるなびリサーチ部」による調査
ぐるなび会員の女性ユーザーを対象としたWEBアンケート
調査期間:2023年1月6日(金)~9日(月)
調査対象:全国:20代~60代のぐるなび女性会員1,000名
【サマリー】
・贈る相手は「配偶者」が5割で最多、次いで「自分」と回答した人が3割弱。
・重視点TOP3は「パッケージがおしゃれ、かわいい」「好きなショコラティエ、パティシエ」「限定品」 で昨年と変わらず。4位は昨年の「高級ブランド」に代わり「低価格」がランクイン。
・義理チョコを購入する人は3割。
「ハンドメイドマーケップレイスCreema」による調査
Creema(クリーマ)ユーザーを対象としたインターネット調査
調査期間:2023年1月10〜11日
調査対象:Creemaユーザー 男女1,115名
【サマリー】
・「自分用に購入」がする人が3割。2年連続で増加で1.5倍に。
・目的には、「推し活」と「ペット」がランクイン
・贈る相手は「パートナー」「家族」「自分」がトップ3
「名古屋タカシマヤ」による調査
同社ホームページにてアンケート
調査期間:2022年12月20日(火)~2023年1月6日(金)
有効回答数:2,455名
【サマリー】
・「義理」は過去最低、贈りたいのは“身近な大切な人“
・自分で楽しむのはもちろん、家族でシェアして楽しむ方も多い
バレンタインデーの市場規模の推移
供給側からみたバレンタインデーの市場規模

日本記念日協会が毎年発表しているバレンタインの市場規模の推移は上記のグラフのようになります。これはメーカーや小売店などの情報から判断されたもので、このような金額のチョコレート商品が世の中に提供されている、という「供給」視点での経済を示したものになります。
ここ10年ほどは1200~1300億円付近で推移していますが、2017年頃でピークを迎えている可能性があります。(2014年は大雪の影響で市場規模はかなり小さく計測されています)
2020年2月はコロナでの自粛生活が始まる直前ですが、この頃には海外の高級チョコレートブランドだけでなく、国内を含めてこだわりのブランドも次々に登場していて、選択肢がとても多くなっています。
供給側からみたバレンタインデーの市場規模

こちら(上図)は、visualizing.infoが総務省の「家計調査」データをもとに推計した調査結果をもとに、グラフ化したものです。
二人以上の世帯全体の単身世帯(推計)の支出額をもとにしたもので、消費者が実際にチョコレートに使った金額、つまり需要側からみた経済(市場規模)です。
前出の供給側の数値は売れ残りや個人以外の購入なども含まれますので、金額の規模にはかなりの差があり、推移も少し違う動きに見えますが、やはり2017~2018年でピークアウトしているような結果になっている点で同じです。
供給側の方がマーケットの変化を先に察知して、供給量を減らしているとも読み取れます。
実際に近年は、2月14日の前後だけで購入するのではないことや、ブランド側でも予約販売や早めの売り切れがあるなど、需要と供給のバランス調整がされるようになっていると感じされます。
東京都内百貨店・ショッピングセンターのバレンタインフェア
百貨店では今年もバレンタインフェア(イベント催事)が行われますが、会期や規模はここ数年で縮小傾向がみられます。関心の高い層が注目するブランドなどは予約やネット販売などで購入され早い時期に売り切れになるなど、2月14日当日まで潤沢に販売するような展開にはならないブランドが増えています。
都内のバレンタインフェア公式サイト一覧
2023年のチョコのトレンドは?
バレンタインが恋人イベントでなくなった今、近年の日本の経済状況も鑑みると、高級ブランドチョコレートへの関心は下降気味のようです。
価格やブランド名にこだわらず、自分が関心を持つチョコ―レートを購入する人が増え、選択肢もますます多くなっていきます。
東京都内各所のバレンタインフェアを巡ってみると、プチギフトとしてはもちろん、自分用としても買いやすい手ごろな価格(数百円~千円台程度)の商品がよく売れている印象がありました。
また、オーガニックやフェアトーレードなど“サスティナブル”をテーマとするチョコレートも多くなっています。
バレンタインの歴史
世界でのバレンタイン
「女性が男性にチョコレートを贈る」というバレンタインデー風習は、世界的にみると日本だけ、というのは今ではよく良く知られていることと思います
世界的には、恋人の日、夫婦とカップルの日と捉えられることが多く、プレゼントを贈り合うのはチョコレートに限らず花やカードなど、また女性から男性よりも、男性から女性へ贈ることの方が多いようです。
日本のバレンタインの発祥は?
この日本型のバレンタインは昭和40年代にはイベントとして定着しつつあったようですが、その発祥については諸説あります。
最も古いものとして、昭和10年に神戸のモロゾフ製菓が、外国人向け英字新聞『ザ・ジャパン・アドバタイザー』で、「あなたのバレンタインにチョコレートを贈りましょう」というコピーで広告を出稿したのが始まりとされています。
▶【モロゾフの参考記事】日本のバレンタインはモロゾフからはじまりました。
企業が主導した日本のバレンタイン
モロゾフ以外にも、
・昭和33年:メリーチョコレートが伊勢丹で開催したバレンタインフェア
・昭和35年:森永製菓の新聞広告
・昭和43円:ソニープラザによるプロモーション
などいくつもの企業がバレンタインの普及に関わっています。
菓子メーカーの販促プロモーションの一つとしてスタートしたものが、約50年間に渡り日本の大きなシーズンイベントとして成長し定着し続けてきたのです。