人は目にした画像や映像を自分の都合のよいストーリーに当てはめて認識しようとすることがあります。いくつかの画像を続けてみると、それらに関係があるように感じてしまう現象があり、その現象はクレショフ効果と呼ばれています。
クレショフ効果は、広告などのマーケティングコンテンツで、昔からよく利用されています。
クレショフ効果とは、関連の無い映像や画像を続けて見た時に、それらを無意識に関連付けてしまう心理現象のことです。
広告の映像や画像にもよく利用されています。
例えば、結婚式の写真の後に、笑顔の女性の写真を続けてみると、その笑顔が結婚を「祝福」しているように見えるものです。
1922年に映画理論家のレフ・クレショフが、無関係の映像を編集の仕方によって、前後の映像に意味のつながりがあるように錯覚させる「モンタージュ理論」を発見しました。
この「モンタージュ理論」を実証する際に見つかった認知バイアスが、クレショフの名にちなんで、クレショフ効果と呼ばれています。
クレショフの実験は、俳優の「無表情カット」の前に「3種類の映像(スープ皿、棺桶、女性)」を見せ、俳優の無表情から観客がどのような解釈をするのかを検証しています。
結果は以下のようになりました。
・スープ皿の映像:食欲や空腹感
・棺桶の中の遺体の映像:悲しみや落胆
・ソファに横たわる女性の映像:欲望や性欲
俳優は、どれも無表情であるのに、このように3種類の違う感情を読み取ってしまうのです。
広告や販促などの手法の中で、ビジュアルに関係するものは常にクレショフ効果を考慮していると言えます。
プロモーション映像(TVCMやネット動画、資料映像など)において、対象商品の映像の直前に、伝えたいことや強調したいものに関する映像を入れ、イメージを強調したり、方向性を誘導したりします。
【例】日本酒の販促ツールに使うビジュアル
(A) 湧き水のビジュアル
(B) お正月や伝統行事のビジュアル
この場合(A)は銘水で仕込まれた日本酒と感じ、(B)だとおめでたい日の贈り物に適した日本酒と感じられます。
商品パッケージや店舗装飾、広告などでイメージは統一感を持たせることは、ブランディングにおいて重要です。
マーケティング用語では、トーン&マナー(略してトンマナ)や ルック&フィールなどと言うことがあります。
色やデザインが統一された環境の中に商品が並んでいると、それらのビジュアルに引き続き目に入る商品に関連したイメージを持ちやすく、ブランドの認知や好感度に繋がるという考え方は、クレショフ効果の一つと考えることができます。
【例】商品のパッケージがシンプルな無地の紙製の場合
(A)素朴なオーガニックイメージのデザイン棚やビジュアルと共に陳列
(B)キラキラした装飾品やポップなイメージツールと共に陳列
この場合、(A)はムダを排除したエコなイメージのブランドと感じ、(B)だとデザインコンセプトの無い安い商品と感じられる可能性があります。