
12月1日に『現代用語の基礎知識選2022ユーキャン新語・流行語大賞』が発表されました。
今年の大賞は「村上様」です。
この「ユーキャン新語・流行語大賞」には傾向があり、毎年、”野球関連”の言葉が多く選ばれます。そしてノミネート語に多く入ることもあり、一般投票でも上位4語のうち3語が野球関連です。
「野球の話題が社会の話題になるほど、日本では野球が人気スポーツ」というのは、昭和・平成の時代に比べれば薄まっているように感じるのですが、選者と関心層は年齢層が高めであることが想像できます。
では、受賞語とノミネート語を紹介します。
年間大賞
村神様
東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手のSNSでの呼称。2022年は7月に史上初の5打席連続本塁打、10月のシーズン最終戦で56号本塁打を放ち、最年少の50本到達記録を更新などチームの勝利への貢献度が高い打撃に対して、このように呼ばれるようになり、ニュースなどでも使われるようになりました。
トップテン(大賞以外の9語)
キーウ
ウクライナの首都はこれまで「キエフ」とされていましたが、ロシアによるウクライナ侵攻が進む中で、政府がウクライナの地名をロシア語読みからウクライナ語読みにするとし、「キエフ」は「キーウ」と変更されました。
きつねダンス
北海道日本ハムファイターズのファイターズガールによる応援ダンスのこと。原曲がノルウェーの兄弟ユニット・イルヴィスが歌う「The Fox(ザ・フォックス)」というタイトルであることが名前の由来です。ファイターズガールがきつねの耳としっぽをつけて踊ります。2022年3月に初披露された後、ファイターズの公式動画サイトに所属選手がきつねダンスを踊る動画が投稿されてから注目を集め、人気の野球のイニング間パフォーマンスの枠を超えて人気を集めています。
国葬儀
2022年9月に、元首相の阿部晋三氏の葬儀が国葬として執り行われました。しかし日本では戦前の法律である国葬令が昭和47年に失効していることから、現在の日本に法的な国葬はなく、政府は、今回の国葬は内閣府の行う国の儀式であり法的に弔意を強制するものではないとしています。
宗教2世
親が信仰する宗教の教えの影響を受けて育った子ども世代のことで、近年、当事者側が使うようになった呼称です。特に2022年7月の元首相銃撃事件後に容疑者の犯行動機が「親が信仰する宗教に関係していた」ことだと報道され、より注目度が高まりました。
知らんけど
関西の人のロぐせとされるもので、文末に付けて、断定や責任を回避する言い方。関東(全国)的な言葉で表すと「もしかすると」や「~なんじゃない?」というようなニュアンスのものだと思われますが、関西人が話す時に、断定文の文末につけて、すべてをひっくり返すような文脈になることから、その面白さを若い世代が取り上げることが多くなったようです。
スマホショルダー
スマートフォンを斜め掛けできるアイテム。スマホケースにストラップが付いたタイプのほか、カードケースなどが着いたものなどがあります。キャッシュレスの機会が多くなり、男女ともに広い世代で外出時の荷物を少なくしている人が増えているようです。
てまえどり
コンビニやスーパーなどの陳列棚では消費期限が先のものが棚の奥に並べられていることが多く、食品口ス軽減の観点から、棚の「手前」にある賞味期限の近い商品から手に取ってもらうようにする啓発運動のこと。
ヤクルト1000
ヤクルトが発売する乳酸菌シロタ株入りの宅配飲料「ヤクルト1000」の店頭向け商品である「Y1000」が2021年10月に全国販売となると、直後から売り切れが続出する人気となりました。SNSでは「睡眠の質がよくなった」などのロコミが見られ、乳酸飲料市場全体を押し上げるほどの現象にもなりました。
悪い円安
2022年は値上げラッシュの年となりました。それに対して賃金の上昇が少ないため、生活が圧迫されていくことが指摘されています。そして円相場は1ドル=145円台まで円安が進み、輸入経済にも打撃となっています。いままで政府は物価上昇や円高抑制を良いものとしてPRしてきましたが、現在の円安は良いことが少ないとの印象が強く、悪い円安と評価する人が多いようです。
選考委員特別賞
青春って、すごく密なので
夏の甲子園で東北勢として初優勝した仙台育英高校の須江航監督が優勝インタビューの際に発した言葉。コロナ禍で制限のあるの高校生活を強いられた学生たちに向けた言葉であり、多くの人の共感を呼んでいます。
受賞以外のノミネート語
以下は、受賞にはならなった今回のノミネート語です。
インティマシー・コーディネーター
映画やテレビなどの製作・撮影現場で、性的なシーンを撮影する際に監督など制作サイドと俳優の間で合意形成の調整を行う人のこと。アメリカでは試験をクリアして肩書を得る専門職として成り立っており、IPA(Intimacy
Professionals Association)などの団体が存在しています。日本では現在同コーディネーターとして仕事をしているのは、前述のIPAに所属している浅田智穂さんと西山ももこさんの2人のみだそうです。
日本で最近、映画監督と女優の間でのセクハラ問題が複数ニュースなるなど、芸能界のモラルは度々話題になっており、この職業に注目が集まっています。
インボイス制度
2023年10月1日からの消費税の計算・納税申告の制度が新しくなり、適格請求書(インボイス)等保存方式となるのです。企業や事業主に関係する話ですが、納税事業者すべてがインボイス登録をしなければならないということと、個人事業主などが対応しなくてはならないことから混乱もあるとされています。個人事業主や零細企業に多い“免税事業者”は登録の対象ではないのですが、実はそのような免税事業者に発注する側の企業が消費税分を多く払わなくてはならないことから、消費税分の値引を要求されたり、取引を避けられたりする可能性があるのも懸念点です。
また事業者間での取引に手数が増えることから、請求書(インボイス)の形式や書式の統一化が推進されることとなり、デジタル化が一気すすむことになりそうです。
大谷ルール
2022年から変更されたメジャーリーグのルール。ロサンゼルス・エンゼルスの大谷選手のように投打二刀流での活躍を想定していることら大谷ルールと俗称で呼ばれているものです。投手として打順に入った場合、降板した際にはどこかの守備につかなければ打席に立てなかったものが、守備につかずとも指名打者(DH)として出場を続けられるようになりました。
オーディオブック
文字コンテンツを音声化書籍のこと。。ニュースやブログ、語学学習など、文字情報を音で聴けることから、移動時間や作業をしながらコンテンツを楽しめることがメリット。このように音で情報収集する「耳活」という言葉も広まってします。
OBN(オールド・ボーイズ・ネットワーク)
男性中心で運営されたきた組織特有の企業文化、業界慣習、人間関係などを指す言葉。OBNが強固な組織では男性中心の社交場などで非公式に、事実上公式な意思決定が行われてしまい、結果的に女性が排除されがちになるとの指摘があります。
オミクロン株
新型コロナウイルスの変異株。2021年11月に南アフリカで発見。感染力は高いが従来の株に比べて軽症で済むとされています。
顔パンツ
コロナ対策でのマスク着用は日常として定着してしまったことで、「マスクはもはや下着のような存在」ということから、顔パンツという表現が一部で使われました。
ガチ中華
数年前からの「街中華」ブームに続いて、中国人向けのより本格的な中華料理店である「ガチ中華」がメディアで多く取り上げられるようになりました。エリアとしは、新チャイナタウンとも言われる池袋、高田馬場、埼玉県の西川口駅周辺などです。
いわゆる日本人を対象にした横浜や長崎の中華街とは異なり、「中国人による、中国人のための中華街」は、中国が飛び交うような異国感が人気。料理は日本人向けにアレンジされていない中華料理でそれが新鮮な味となっているのです。またマスメディアで多く取り上げられるのは多くのが取材に対して寛容で、取材しやすい場所柄、日本人で混雑してないことなどから、取材がしやすくメディアの登場率が高まったという裏事情もあるようです。
こども家庭庁
内閣府内に2023年4月設置予定の新しい行政組織。子どもの権利を守る「こども基本法」も2022年6月に成立しています。ただし、教育分野を担当するのは文部科学省であることから、子ども政策の一元化などはできないのではという声があがっています。
SPY×FAMILY(スパイファミリー)
スパイの夫と殺し屋の妻、超能力者の娘が織りなすコメディー風の物語。原作は遠藤達哉氏の漫画で、2022年4月にアニメ化されて人気となりました。娘のアーニャのセリフである「がんばるます!」などが流行っている。
#ちむどんどん反省会
NHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』の視聴者の間で、放送後に内容を話題にするツイートが流行。視聴率は2010年以降最も低い数字となるなど人気の低さやドラマ内容への不満なども度々ニュースになったが、視聴者たちが反省会と称してネット上で盛り上がったことが流行語となる皮肉が現象でもある。
丁寧な説明
岸田文雄首相が政権発足以来、多くの質問に対して「丁寧な説明」「丁寧な対話」などの言葉を多用することから、丁寧と言いながら返答をはぐらかす術として、揶揄されています。
ヌン活
コロナ禍で夜の食事が自粛されるようになったことから、近年ホテルなどでの「アフタヌーンティー(午後に軽食やスイーツとともに楽しむティータイム)」が人気となっていました。そのアフタヌーンティを楽しむ様子を表した言葉。今でも多くのホテルなどがさまざまなプランを提供しています。
BIGBOSS
2021年11月、北海道日本ハムファイターズの監督に就任した新庄剛志氏が自ら名乗った愛称。また、2022年シーズンの登録名ともしています。
メタバース
メタバースとは、ネット上の3DCG空間でアバター(化身)による交流を実現する仮想空間およびそれを提供するサービスのこと。2010年頃から注目されているものですが、近年、さらなる仮想現実技術の向上やリモート交流のニーズ、NFT技術の登場などを背景に、また注目と需要が高まっています。
ヤー!パワー!
YouTubeでも活躍し、今年は吉本興業を退社したことでも注目された筋肉芸人・なかやまきんに君。SNSではYouTubeに続いてTikTokが若い世代で話題になっています。「ヤー!」や「パワー!」の決め台詞は、彼が昔から披露しているパーフォーマンスですが、改めて若い世代にウケているようです。
リスキリング
技術革新やビジネスモデルの変化に対応する新しいスキルを身に付けるための学び直しのこと。2020年のダボス会議にて「リスキリング革命(Reskilling
Revolution)」が発表されたことが注目のきっかけであり、岸田総理の所信表明演説でもリスキリングに「今後5年間で1兆円投入」という発言がありました。
もともとリスキリングとは、「就業者のスキル向上させる」という企業側の視点が強い言葉ですが、いまは、学ぶ本人の認識の高まりも期待されています。
ルッキズム
身体的な美醜による偏見、差別、外見至上主義のこと。容姿で異性や社会での評価に差が生じるという考え方で、SNSなどの世界ではそれが助長されることが問題視されています。特に、世界的にみると容姿についての発言をNGとする国が多い中、日本は悪意なく容姿を褒める人も多いことから、ルッキズムの意識が低いと言われることがあります。
令和の怪物
千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希選手のニックネーム。28年ぶりに完全試合を達成し、昭和の怪物・江川卓氏、平成の怪物・松坂大輔氏との比較で、こう呼ばれています。
マーケッター、プランナーにとっての流行語
職業柄、この手の言葉には割と親しんでいる方が多いことでしょう。
毎年、この手の流行語大賞が発表されると、「こんな言葉流行ってない!」「一部のマスコミが勝手に使っているだけ」というような意見も聞かれます。
そもそもそういう賞なのです。誰かが言い出した言葉に時代の世相を反映させてみようという趣旨のものです。
そして、マーケッターやプランナーの皆さんは、仕事場などでもこれらの言葉を使う機会もありますので、今回ノミネートされた30語は一通り目を通してみて下さい。
『現代用語の基礎知識選 2022ユーキャン新語・流行語大賞』とは
1984年にスタート。1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの。『現代用語の基礎知識』収録の用語をベースに、自由国民社および大賞事務局がノミネート語を選出し、選考委員会によって年間大賞語が選ばれる。
選考委員
姜尚中氏(東京大学名誉教授)、金田一秀穂氏(杏林大学教授)、辛酸なめ子氏(漫画家・コラムニスト)、俵万智氏(歌人)、室井滋氏(俳優・エッセイスト)、やくみつる氏(漫画家)(50音順)と、大塚陽子氏(『現代用語の基礎知識』編集長)。